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- ふたつの清流が生み出すブレンドの神秘
たぐいまれな感性がウイスキーづくりの環境を選ぶ。
透徹した眼差しが、ウイスキーづくりの行く先を見すえる。
ブレンドの神秘は人間の感性の神秘でもある。



広瀬川と新川川との合流付近。異なる二つの清流が出会い、新たなせせらぎが生まれる。水の細かい粒子が飛び交い、朝夕は霧となって大気を漂う。ニッカ仙台工場は、そんな豊かな水辺の一郭にある。
竹鶴政孝が、北海道余市に続く第二の工場候補地を求め、この地に足を踏み入れた瞬間、二もなく三もなく即決したと伝えられる。
川と川が交わる所には、古来、多くの「聖地」が育まれてきた。感受性豊かな古代の人々は、川の交わりがつくり出す絶妙な“ゆらぎ”こそ、人の心を、いや、生命あるものすべてを浄化する力があると知っていたからに違いない。この無垢な眼差しに逆らわぬかぎり、聖地は人々の心を潤し、同時に大いなる恵みを約束してくれたはずだ。
ウイスキーを育てる環境にも、実は同じような眼差しがあるのかもしれない。ウイスキーは生まれ育った環境を、その味わいに色濃く反映することを思えば、少なくとも竹鶴が自然への人並みはずれた眼力をもっていたことは想像にかたくない。
良いものを生み出す原点には、そんな素朴な感性がもっとも大切なのではないだろうか。


ところで、二つの異なる流れが交じり合ったとき、それまでとは次元の異なる世界がほの見えてくるという話、視点をちょっと変えれば、まるでウイスキーのブレンドの神秘にも通じる話ではないか。
片や大麦麦芽だけを原料に、単式蒸溜器で丹念に蒸溜されたモルトウイスキー。片やトウモロコシや大麦麦芽を原料に、連続式蒸溜機を使って蒸溜されたグレーンウイスキー。
こうした原料も製法もまったく異なる二つの個性が出会うことにより、ウイスキーの命である香味やコク、口当たりなどのバランスが単一では得られない次元へと昇華していくのだ。
むろん個性的な味わいにおいては、モルトウイスキーの明快さは魅力だ。とりわけ1か所の蒸溜所でつくられたシングルモルトは、その筆頭に上げられよう。しかし、モルトの個性を際立たせながら、より飲みやすいウイスキーに仕上げるところにブレンドの妙味がある。
そこにブレンダーや蒸溜技師らの鍛え抜かれた感性が求められ、一方で欠かせない存在となるのが上質のグレーンウイスキーというわけだ。


ここ仙台工場では、“カフェスチル”と呼ばれる初期型の連続式蒸溜機が使われている。
本格的なグレーンウイスキーをつくるため、スコットランドからわざわざ解体して取り寄せた世界的にも希少なものだ。
この蒸溜機は、初期型ゆえに若干の雑味成分が残ったり、温度管理が難しかったりと決して効率のよいものではない。
しかし、緻密なコントロールさえ行えば、その雑味そのものが微妙に変化し、華やかな香りや深みをもたらすという代えがたい利点がある。
一般の市場評価でも、ニッカのグレーンウイスキーはそのまま飲んでも旨い、といわれるゆえんだ。
そして、こうした上質のグレーンウイスキーと個性豊かなモルトウイスキーとの幸福な出会い。これがブレンデッドウイスキーの奥深い味わいへとつながっていく。
聖地“宮城峡”。この地へ行くと、ニッカならではの物づくり哲学が見えてくる。