蒸溜を訪れる人々にウイスキーの面白さを知って欲しい。
シングルカスクの第一歩は原酒販売所から始まった。

ウイスキーの世界では「原酒」と言うと、モルトウイスキー、グレーンウイスキーを指すが、「原酒販売所」の「原酒」も今話題の「シングルカスク」も呼び方こそ違っているが中身は同じで、他の樽のモルトウイスキーを一切混ぜ合わせることなく、また割り水もしていない、単一の樽からそのままボトリングしたモルトウイスキーのことである。
世界唯一のウイスキー専門誌「ウイスキーマガジン」主催のコンテストで「ニッカシングルカスク余市10年」がベスト・オブ・ベスト2001のトップという栄誉に輝いた。
以来、注目を浴びるようになり、樽番号が記されたウイスキーとの唯一無二の出会いを楽しむ人々が増え続けている。

シングルカスクは、特別に選ばれた一つの樽のモルトウイスキーをそのままボトリングしたもの。
蒸溜所では様々な個性のモルトウイスキーをつくりだすため、樽の材質、使用回数、焼き方、サイズなどを変えて貯蔵する。
樽は大きさによって呼び方が違い代表的なものでは「バット(約500リットル)」、「ホッグスヘッド(250リットル)」、「バレル(180リットル)」があり、それらを総称して、樽のことをカスクと呼んでいる。
樽からそのままボトリングする、いわば「樽出し原酒」のほとんどは「ホッグスヘッド」で熟成させているので、一樽から出来るボトル(750ml)の本数はわずか300本弱。
同じ樽番号のウイスキーに出会うことは、ほとんどない。
そこにシングルカスクの醍醐味があるといってもいいであろう。



この「ニッカシングルカスク余市10年」が脚光を浴びる4年前の1996年11月、土日に限定してアルコール度約60度の純粋な樽出し原酒を余市蒸溜所の2号貯蔵庫で販売したのがそもそもの「原酒販売」の始まりである。
きっかけは当時の北海道工場長であった林宏の「蒸溜所見学に来てくださる方々に、ウイスキーの面白さを知って欲しい。同じ蒸溜所でも樽や熟成年数によってウイスキーの味わいは微妙に違ってくる。そのために、試飲と販売をおこなってみてはどうか」という提案からであった。
樽の選定を行ったのはマスターブレンダー、佐藤茂生。 色や香り、味わいを吟味して味わいのバランスがとれたモルトウイスキーが入った樽を選んだ。
当初は 5年、10年、15年熟成の樽からモルトウイスキーを取り出しそれぞれ小型ボトルに入れて「原酒」と呼称して販売。 やがて「樽に入れる前のウイスキーは無色透明である」ということを知ってもらおうと未貯蔵のものも加わった。 「この原酒販売がシングルカスク余市10年の誕生の一因になったと言えるのではないか」と佐藤茂生は自負している。
やがて1998年4月にウイスキー博物館が完成すると、原酒販売所は、博物館向かいの21号貯蔵庫に移転。(冬期間11月15日から翌年4月中旬まではウイスキー博物館のテイスティングカウンター向かいで販売)
現在は熟成年数に加えて、樽の個性を記した新シリーズも登場し、蒸溜所を訪れた人々に一期一会の琥珀色の浪漫を語りかけている。