『ニッカウヰスキー余市蒸溜所』を訪ねる。北へ。ジャパニーズウイスキーの故郷へ。(後編) 夏は北限の鮎が泳ぎ、秋には鮭が遡上する清流余市川。ウイスキーづくりに美味しい水は欠かせない。

旅の終わりのバーカウンターで。

北海道に着いた翌朝、余市蒸溜所を訪ね、工場見学ツアーに参加する。

厳冬期の朝の清々しい光が反射する雪の中、工場内の蒸溜棟、発酵棟、貯蔵庫などを巡り、女性ガイドの丁寧な説明に耳を傾ける。

彼女が博物館内で、竹鶴と彼の最高の理解者であり、伴侶であったリタについて語る様子は誇らしげでもあり、その姿にも心を打たれた(詳しくは竹鶴の自伝や評伝を読んでいただきたい)。ハイシーズンには一度に百人以上の見学者が来訪することもあり、海外からのゲストも多いそうだ。 最後に試飲コーナーでウイスキーの説明を聞き、約1時間でツアーはお開きになる。

蒸溜釜を見学した際に「今日蒸溜したアルコールがウイスキーになるのは早くて5年、長いと20年以上後です」とガイドは説明してくれた。改めて考えると、この蒸溜所で働く人々は皆、長い年月の熟成を経て、次の世代に評価されるウイスキーのため、今日の仕事を捧げているのだ。

竹鶴も同じ想いだったのだろうか。

正面入り口でガイドによる蒸溜所内の無料案内を受け付けている。ウイスキーへの愛情が感じられる丁寧な説明が嬉しい。

竹鶴が妻リタのために建てたという余市郊外にあった和洋折衷様式の竹鶴邸を蒸溜所内に移築。玄関ホールと庭園が一般
公開されている。


貯蔵庫越しに見た乾燥棟。

おなじみニッカのシンボル、キング・オブ・ブレンダーズのステンドグラス。


時と場所の力を借りてモルトウイスキーを育む貯蔵庫。 土間に並べられた樽は、それを置く場所で個性の異なるウイスキーに育つと言う。

白樺の木立の向こうに並ぶ貯蔵庫。全部で27棟(かつては28棟)。第一貯蔵庫は登録有形文化財。


長い旅でも短い旅でも、旅の終わりにはウイスキーがいい。
都心の雪が雨に変わった夜、盛り場のバーを訪ね「ニッカのウイスキーは何がありますか」と尋ねる。
「珍しいのがありますよ」と、カウンターのライトに映し出されたのは、余市蒸溜所限定のシングルカスクの原酒だった。
「実は私も先日、余市に行ってきたんです」。
「そうですか」と破顔するバーテンダー。「良いところだったでしょう。なんかこう、知らない国に行ったみたいな……」。

20年の原酒の香りを水割りで楽しみながら、しばし自分自身の20年の記憶を遡る。
ウイスキーを飲むことも、旅なのだと思った。

「シングルモルト余市12年」。竹鶴の夢の結晶の一つ。北の氷でもう1ショット。


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