余市蒸留所写真 余市蒸留所写真

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第28話

第28話

胸にこみあげるのは感謝の気持ち

私がニッカウヰスキーの前身である大日本果汁に入社したのは1949年の春。今、振り返ればあっという間であるが、半世紀の間に随分とたくさんの方々にお会いしたものだ。それぞれ思い出深いものだが、ウイスキーづくりに携わったお陰で、思いがけぬ方と出会う機会にも恵まれた。

『マイウイスキーづくり』は1987年、スーパーニッカ25周年を記念し、また、ご愛飲くださっている皆様への感謝のしるしとして『MY WHISKYづくり体験・北海道2泊3日の旅』を企画して50名の方々を招待したことから始まったものであった。

糖化槽の清掃、ピーティングや蒸溜のための石炭くべ、樽づくりなどの工程を体験。そのときの皆様の満面の笑顔に随分と驚かされたものである。中でも糖化槽の清掃は、熱気の中、大変な肉体労働なのに、積極的に取り組んでいらっしゃった。

たまたま出張で余市へ行き、宿泊先の旅館で朝食をとっていたところ『マイウイスキーづくり』に参加された数人の方がいらっしゃったこともあった。こちらはスーツ姿で背中を向けているので、どなたも私がニッカウヰスキーの関係者であることに気がつかれていない様子。そのとき「昨日のマイウイスキーづくりで・・・」という声が耳に飛び込んできた。(もしかしたら不都合なことなどがあったのだろうか)と心配になって耳をそばだてて聞いていると「石炭がなかなか上手くくべられなくて、半分以上が床にちらばっちゃってね。やっているうちに釜の中にパッと入るようになったときは嬉しかったなぁ・・・」という声と笑い声が上がった。心底ほっと胸をなでおろしたものである。

それから10年後の贈呈式で皆様と再会。マイウイスキーを手に談笑なさる姿に、つなぎ姿で懸命に蒸溜作業や樽運びをされていた笑顔が重なった。

その後、『マイウイスキーづくり』は有料のイベントとして続けられることなり、たくさんの方々が参加してくださった。回を重ねるごとに参加された方から心温まるお手紙をいただくこともあり、喜びもひとしお。
皆様の樽は余市蒸溜所の貯蔵庫で熟成の眠りの中。参加された皆様の夢を見ているのではないだろうか。

一方、『ニッカウヰスキーの夕べ』は、日頃ニッカをご愛飲くださっている皆様と、より深い交流を持つことができたら、ということで3年前から始まったものであった。最初は「皆様ご多忙なのに、果たしていらっしゃってくださるのだろうか」という危惧もあったが、それは取り越し苦労であることがすぐに分かった。たくさんのお申し込みをいただき、毎回抽選を行なうほどだったのである。

わざわざ遠方より足を運んでくださる方、「親子二代でニッカファンです」と仰ってくださる方、私よりもウイスキーについて詳しいのではないか、と驚くほどウイスキー通の方。時間が限られているので充分なお話もできないままで誠に申し訳なく、いつも名残惜しい気持ちで、皆様をお見送りするばかりである。同時に胸にこみあげるのは感謝の気持ちと、ウイスキーづくりに携わっていて本当に良かったという想い。もし、政孝親父の養子になることなく、他のエンジニアになっていたら。こんな感動は知ることなどなかったに違いない。

また、意外なものが私と皆様を引き合わせてくださるきっかけになることがあった。意外なものというのは政孝親父の『ウイスキーと私』、『ヒゲと勲章』、川又一英氏著の『ヒゲのウヰスキー誕生す』、そして森瑤子氏著の『望郷』。これらは、ニッカウヰスキー、政孝親父、リタおふくろのことを綴った書物である。『ヒゲと勲章』は随分前に廃刊になったものだが、わざわざ古本屋をまわって探されたという方もいらっしゃった。

「『ウイスキーと私』、そして『ヒゲのウイスキー誕生す』を読んで、竹鶴政孝という人物に強く惹かれました。この本を読むまでウイスキーを飲んだことがほとんどなかったのですが、竹鶴政孝に感銘を受けてからニッカのウイスキーを飲むようになりました。そのたびに本に書かれていたことが浮かんできて、とっても味わいが深くなるんですよ」というお話をお伺いしたり、「森瑤子さんの『望郷』を読んで、竹鶴政孝とリタ夫人の生き方に感動しました。ウイスキーはあまり飲めないのですが、ニッカウヰスキーが好きになりました」という内容のお手紙が届いたことがあった。

書物が縁となってニッカを愛してくださる方がいらっしゃるとは。人とウイスキーの縁は実に面白く、不思議なもの、素晴らしいものである。

2004年も残りわずかとなった。今年もたくさんの方々との交流を持つことができたことを心から感謝したい