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第56話

第56話

甲子会(きのえねかい)

ウイスキー好きが集まって飲んでいると、心地よく酔って、その場でふっと思いついたことが後に現実になることもある。「余市 ニッカの会」や「ハンドレッドクラブ」などの会が発足したのも「こんな会があったら面白いじゃないか」という思いつきからであった。

来たる5月に開催される「甲子会(きのえねかい)」も、そのひとつである。私は、大正13年(1924年)、甲子(きのえね)の生まれである。 20余年前のこと、元醸造試験所主催の集いがあったとき、その会に甲子生まれが大変多いことに気づき、間もなく到来する還暦を契機に“甲子会”を発足しようということになったのである。

甲子は十干(じっかん<※>)最初の甲(きのえ)と十二支最初の子(ね)が60年に一度出会う縁起の良い年と言われている。
あの甲子園球場が誕生(誕生時は「甲子園大運動場」)したのも大正13年で、この年に由来して命名されたということだ。
「甲子会」のメンバーは元醸造試験所の所長、酒蔵の当主、大学教授などであるが、ほとんどが酒類事業に携わっていたので当然、酒の話題で盛り上がる。

<※> 万物は木火土金水の五行から成り立つという中国の古代思想である陰陽五行説に基づき、木、火、土、金、水と甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類を、それぞれの「陽」を「兄(え)」に、「陰」を「弟(と)」に分けたもの

以前、ある人にこんなことを言われた。
「ニッカファンの方々は独特の雰囲気がありますね。ただニッカのウイスキーを好んで飲むというばかりでなく、蒸溜所や自分が好きな銘柄のウイスキーのことを話していると、とても楽しそうで、何と言うか
・・・一途さのようなものが感じられるんですよ」

確かに、熱心なニッカファンの方には、一途さ、純粋さ、頑固さがあるかもしれない。何度も蒸溜所を訪ねてくださったり、「ウイスキーづくり体験」に参加してくださったり。ウイスキーを飲むときは必ずニッカのウイスキー。イベントなどでお会いすると、ウイスキーづくりや蒸溜所の話、政孝親父やリタおふくろにまつわるエピソードなど、時間を忘れて語り合うこともたびたびである。ウイスキーづくりに携わって約半世紀が経つが、熱心なニッカファンの方々の存在は、大変有難い、かけがえのないものである。

「甲子会」の話に戻るが、当番となった幹事が「どこで、どんな酒を飲むか」と趣向を凝らすので、毎回参加するのが楽しみであった。思い出深いのは金沢で開かれた会で、日本酒と金沢の郷土料理、そしてウイスキーを楽しんだ。金沢には日本三名山のひとつである白山があり、そこから流れる清冽な水、加賀で採れる美味しい野菜、日本海で水揚げされる魚介類と、ありとあらゆる食材が揃う。鴨、すだれ麸、シメジ、シイタケ、セリなどを醤油と砂糖、酒をあわせた出汁で煮た治部煮(じぶに)、イワシを米糠で漬けたコンカイワシなどは、とても日本酒に合った。

他の集いでは、オークションで競り落としたという我々が生まれた年である1924年ヴィンテージのワインを楽しみ、私が50年物のスコッチウイスキーを持参したこと(こちらは利き酒のみ)もあった。

日本酒は、合鴨農法<※> による酒造好適米を胡麻粒かと思われるくらい精米して造られた大吟醸酒が卓上に並んだり、飴色を帯びた古酒が振る舞われるという凝りよう。
<※> 水田に合鴨を放し、稲と合鴨を一緒に育てる農法。合鴨が米の害虫であるイナゴや雑草を食べるので農薬を散布せずに済む。
また、合鴨が泳ぐことで田んぼの土がかき混ぜられ、酸素が土混ざって根から酸素が効率よく吸収されて稲がよく育つ。

古酒は、熟成すると含まれている成分が変化して香りや風味が複雑さを増し、独特の熟成香を漂わせるようになる。しかし、ただ放置しておけば古酒になる訳ではなく、上手く熟成させなければ商品価値がなくなってしまう。例えば100本を10年寝かせたとして、100本すべてが旨い古酒になるとは限らないのである。ウイスキーも同じである。ただ蒸溜して樽に詰めて熟成させれば完成するという簡単なものではない。嗜好品に技術と歳月を費やすというのは、実に贅沢なことではないか。

私たちの次の甲子の年は昭和59年(1984年)。この年に生まれた方は、既に成人してお酒が飲める年齢なので、昭和59年生まれのニッカファンの方々が新たにメンバーに加わっていただければ頼もしい限りである。年齢差60歳ということで、どのような話題が出るのか想像がつかないが、きっと面白いより多くの人にお伝えしていきたいものである。