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第65話

第65話

冬の食

「冬の食」と聞いて思い浮かぶものの一つに河豚(ふぐ)がある。私が幼少期を過ごした広島でも河豚がとれたが、幼い頃、釣りをしていると河豚がかかることがあった。河豚は身を守るために風船のようにふくらませて怒る習性があり、海に戻すと風船から空気が抜けるように勢いよく水に潜るので、とても面白かったのを覚えている。

河豚にはテトロドトキシンという毒があり、その毒性は青酸カリの300~400倍とも、1,000倍以上ともいわれている。毒が含まれているのは肝臓や卵巣などの内臓などで、調理を行うには、必ず営業を行う自治体の「ふぐ調理師」の資格を持つ調理者でなければならない。

しかし、卵巣は1年間塩漬けして、さらに2年以上糠漬けにすると毒が抜けて食べられるようになるというから不思議である。味はかなり濃厚で、クセのあるチーズに似ているが、日本酒好きの人には最高の肴であるらしい。

かの松尾芭蕉は「あら何ともなやきのふは過ぎて河豚汁」(ああ、何事もなくてよかった。昨日、河豚の味噌汁を食べたので毒に当たらないかと一晩中心配したものだが)と、小林一茶は「河豚食わぬ奴には見せな不二(富士)の山」(河豚を食べる勇気が無い奴に、富士山を見る資格などない)と詠んでいるが、毒があるとわかっていても食べたいと思わしめる河豚は昔も今も人気のある魚であることに変わりはない(「ふぐ調理師」が調理をする今は、毒よりもお値段が気になるところかもしれないが)。あの独特の歯ごたえと、鍋にしたときの旨味が日本人の味覚を大変満足させるのであろう。

また、広島には西条柿というものがあり、よく食べたものである。果肉は硬すぎず柔らかすぎず、甘くて歯ざわりがよく美味しかった。名前の由来は、広島県東広島市の西条町とも愛媛県の西条市ともいわれているが定かではない。渋柿なので、渋抜きのためにビニール袋に柿とアルコールを入れてしばらく置いてから食べる。なぜ渋味が抜けるのかというと、渋みの原因である水溶性タンニンがアルコールのアセトアルデヒドと結合して不溶性タンニンとなって渋味が抜けるのである。アルコールには様々な使い道があるものだ。

政孝親父とリタおふくろのもとへ養子に行き、北海道に移り住んでから私の食生活は随分と変わった。広島にいる頃は、よく牡蠣を食べたのだが、北海道へ行くとあまり食べることはなかった。何となく北海道の牡蠣に馴染めなかったというのが理由だが、リタおふくろはよく生牡蠣に酢やレモン汁をかけて食べていた。牡蠣はスコットランドでも食べられていたので懐かしかったのではないだろうか。政孝親父も食べていたが酸っぱいものが苦手なので酸味が抑えられる三杯酢をかけていたようだ。

スコットランドといえば、1963年(昭和38年)、私と政孝親父でカフェ式連続式蒸溜機を導入するために訪れたとき驚かされたことがあった。スコットランドの、どんな田舎町にも中華料理店があり、しっかりとした料理を出していたからである。果たして食材をどこから調達してくるのかはわからなかったが、中国の人は世界中に事業を拡大していく能力に長けているものだと感心しきりであった。

その当時は、海外に日本料理店がある、という話はほとんど聞いたことがなかった。しかし最近では世界各国に日本料理店がお目見えし、知人からロンドンの回転寿司店の話を聞いたことがあった。ベルトコンベアで皿が回っているのは日本と同じだが、刺身やチキンカツ、ケーキやデザートも一緒に回っていたらしい。

外国の人は生魚を食べない、という印象が強かったので、ここ数年の日本食ブーム、特に生魚を扱った料理が海外で人気を集めているというのはとても興味深い話である。流通の進歩で新鮮な食材が手に入りやすくなったというのも理由だろうが、慣れ、ばかりでなく外国の人たちの味覚が変わってきているのではないか。最初は健康的、比較的カロリーが低いということで注目を集めた日本食だが、味つけひとつにしても繊細で、素材の持ち味を生かしたものが多い。中には珍味と呼ばれる個性豊かな食べ物もある。和食文化というのは奥が深く、懐が深いものである。

ここ数年、日本のウイスキーも注目を集めるようになったが、より多くの人たちに楽しんでいただけるようになり、とても嬉しく思う。今年も皆様のウイスキーライフをより素晴らしいものに出来るよう、精進するばかりである。