余市蒸留所写真 余市蒸留所写真

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第92話

第92話

ウイスキーづくりは変わらない

引き出しを整理していたら、小さなビニール袋に入った絹のポケットチーフが出てきた。品のあるベージュ色で色むらもなく、随分古いものなのにとても綺麗である。これはあるウイスキー愛好家の方がつくったもので、おそらく一般向けには販売されていない。染め物とウイスキー両方に興味があるということで、ピートが染料に使われている。

ピート(泥炭)は、大麦麦芽を乾燥させ、独特の燻香をつけるために使用される。決して美しいものではないが、そんなピートが布に彩りを与えるとは想像したこともなかった。

政孝親父が『ウイスキーと私』にこんなことを書き残している。

「ヒースは植物の名であるとともに荒れた原野という意味もある。スコットランドのヒース(原野)にあるのは厳密にはヒースではなくヘザー(Heather)である。このヒースが重なりあって長い年月の間にできたものがウイスキーづくりに欠くことのできないピートである。ウイスキーと因縁の深いだけではなく、スコットランドの生活と切りはなすことができないのが、この花でもある。スコットランドの山野を美しく彩り、日本のホーキ草と同じように、ほうきにもなり、ベッドのクッションにも使われるのである。燃料として昔から使われてきたし、この木からとれる渋は、皮なめしに使われている。また、タータン・チェックの染料としても活躍してきた。」

ヒースの花を染料に使うことはあっても、まさか日本でピート染めを試みる人がいるとは想像もつかなかったであろう。

前回、椅子から落ちたという話をしたが、あれに懲りて無理はするまいと誓った。先日も自宅の電球が切れてしまったので、近所で以前、電気店を開いていた方に交換をお願いしたところ快く引き受けてくださった。

聞くところによると、最近では蛍光灯に代わってLED電球が注目を集めているらしい。省電力で長寿命といわれているが、現在のところ、ひとつ数千円というからすぐに手が出る代物ではない。私が余市へ行った当時は丸い白熱電球で、しばらくしてから蛍光灯が普及していった。世の中はどんどん便利になるものである。

便利といえば、携帯電話も昔は弁当箱みたいに大きかったものがポケットに入る大きさになり、通話料金も手頃になっている。私が子供の頃は固定電話がある家の方が珍しかった。

ニッカウヰスキーに勤めるようになって、北海道から東京など遠距離に電話しなければならないときは一騒動であった。まず受話器を手に取り、呼び出しハンドルを回す。すると、局舎に呼び出しのベルが鳴るので、電話交換手が応答したら通話先を伝える。通話先が同一局の場合はそのまま配線を繋ぎ変えるだけで良いが、別局の場合は通話元の配線を別の局の配線に繋ぎ、電話交換手は繋いだ局に連絡して、その次の作業を引き継ぐ。まるで伝言ゲームのような仕組みなので遠距離通話の場合は繋ぎ変えに大変時間がかかった。

申し込んでから通話できるまで通常で数時間、料金がかかる特急で1~2時間待たされることもあった。しかも一度の通話料金が2~3万と高額である。それでも誰かが列車に乗って出かけていくよりはずっと時間の節約にはなった。そんな時代でも現在でもウイスキーづくりは変わらない。仕込み、樽に詰めて熟成させる。余市蒸溜所、宮城峡蒸溜所を訪れると、目まぐるしく変化する時代から開放されるような気がするのである。

ウイスキーといえば、政孝親父は、晩年、入院してからもウイスキーを欠かさなかった。吸い飲みに『ノースランド』の水割りを入れる。これなら横になっても飲むことができる。医師からは「どうか病室に(ウイスキーの)空き瓶だけは転がしておかないでください」と言われていた。親父は「医者からお墨付きをもらった」と喜んでいたが、あちらが根負けしたといった方が正しかったに違いない。

私ももちろんウイスキーを飲むが、さすがに年をとって弱くなった。昔はボトル半分を空けることもあったかもしれないが、今は酔いがまわってきたと感じたら、飲むのをやめるようにしている。皆様もウイスキーは適量、お召し上がりいただきたい。いつまでも健康で美味しく愉しめますように。